異邦人 / カミュ (1963) ... yuta
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Last update: May 16, 2025, 9:29 p.m.

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主人公ムルソーは「死」「太陽」
まさに太陽によって殺し、死ぬ男の話

ムルソーという男は序盤徹底して受動的な人物である
誰かがこうしたらこう思う。何かについてはこう考えるという自発的なものの見方をあまりしない。友人のトラブルに巻き込まれてあるアラビア人を殺してしまうのだが、その理由も「太陽」だった

本作は一部と二部の二部構成になっており、一部は主人公ムルソーが殺人を犯すまで、二部は彼が裁判にかけられて死刑になるまでの話

一部ではムルソーの無関心さ、刹那的行動倫理、そして殺人に至るまでが描かれるのだが、そのスムーズな展開に私は納得感を持って読んでいた

二部ではそのムルソーの性質が全く模範的な一般市民でないことを暴き、自衛のためとはいえ数発の弾丸をアラビア人の死体に打ち込んだことを咎められる。

本作の妙はここで、彼は一部で見せた無関心さなどは実際のところで言えば罪になるほどではないことだ。母を養老院に送って自分は世話をせず、彼女が亡くなった時に泣かずにチョコミルクを飲んだりする。葬式の翌日には女性とコメディ映画を見てビーチで遊ぶ。現代で見ればそれは誰もがやることであって、それ自体に罪があることではない。彼は一方で受動的な生き方から能動的な殺人に手を染めてしまう。これは誰が見ても殺意のある犯行であり、彼が犯した罪でもある。しかしこの裁判ではこのアラビア人を殺害したこと以上の罪、彼が一般的社会道徳と外れているという罪がかけられて最終的には死刑となってしまう。

異邦人であるがために死んだ彼が望むのは、この異邦人としての処刑を皆に見てもらうことだった

しかしこれは叶わないだろうことだけども

Comments

... dasa May 16, 2025, 9:29 p.m.

単行本のマウスパッドくらい薄いところが好き。