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ヒューゴー賞の「三体」はボリュームと価格をみて後回しにしていたところ、短編集があると聞き手に取った。劉慈欣はもともと火力発電所のエンジニアをしていたそうだが、物理や情報学に精通していそうな、理系が書いた文学を感じた。テッド・チャン「息吹」にも理系を感じたけれども、本作のほうが数学・物理学チックか。印象的なシーンの一つに「郷村教師」の一幕、田舎の貧しい教師が小学生に向けて流暢に古典力学を説明するシーンがある。自分も理系科目を一般教養程度には修めたはずだが、その教師、すなわち劉慈欣のように力学を説明できる自信がなくて、落ち込む...。
短編一つずつは歯切れがよくてどんどん読み進められるが、SFを盾にずばずばと現代社会に問題提起する様は重たくもあった。SFというジャンルは、時代と一体のものであるために、他の物語に比べて著者の明確な意図が作品に反映されやすいかもしれない。ニュースにもっと敏感になりたい。
訳者・大森望のあとがきも興味深かった。自分は週末SF好きなのでいろんなSF作品を比較できるほどの読書経験はない。大森はプロのSF好きであり、過去様々のSF作品を引き合いに本作を解釈した語りは勉強になった。おかげで、次に読みたいSFをメモしておくことにも成功した。
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